So-net無料ブログ作成

比較的最近読んだ本の写真 [本]

th_IMG_20171210_093836.jpg

ほぼすべておすすめです。読むものがなかったら、ぜひ手に取ってみてください。これからの日本はどうあるべきなのかや、今後自分はどう生きるべきなのかを、考える標(しるべ)になると思います。

私は年々貧乏になっていくので、なかなか本が買えなくなりました。学生時代や独身時代はひと月あたり2万円ほど洋書を含めて買っていたのですが、いまは1000円から2000円しか使っていません。買いたい本や読みたい本はいくらでもありますが、読む時間もないし、お金もないし、老眼が進行して読むのが辛くなってきているし、いろいろ我慢していません。なんとも切ないですね。


追記:昨日と本日、4キロずつジョギングをしました。この週末は非常に寒いので走っている人をほとんど見かけませんでした。走ったあとは、爽快感もなく、疲労が残るだけです。まだまだ体力が回復していない証拠なのでしょう。精進します。

夕方、ガソリンスタンドへ行き、給油。ついでに空気圧をチェック。フロント270、リア260に上げました。このところ乗り心地が悪いと思っていたのですが、空気が抜けていたようです。2ヶ月位放置していたせいでしょう。調整後は、乗り心地が良くなりました。



共通テーマ:

ナサニエル・ホーソン『完訳 緋文字』(岩波文庫) [本]


完訳 緋文字 (岩波文庫)

完訳 緋文字 (岩波文庫)

  • 作者: N. ホーソーン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1992/12/16
  • メディア: 文庫



大学時代に授業で習ったのだけれど、当時は何が良いのかピンとこなかったので、実際に手にとることさえなかった小説だった。ところが読んでみたら、傑作中の傑作であるとわかった。この作品が傑作である理由は3つある。

1つは、3人の人物それぞれに共感ができること。姦婦ヘスター・プリン、彼女の不倫相手であるアーサー・ディムズデール牧師、実夫のロジャー・チリングワースのいずれかを一方的な悪者にするようなッキ方がされていないのが現代的に思える。

2つ目は、1つ目の要素にもつながるが、ホーソーン独特の多項目選択的記述の書き方がされていることだ。ヘスターの胸に付けられたAの文字は、一般に姦通(adultery)のAだと思い込まれているが、それだけではなく、有能な(able)のAとも(231ページ)、ArthurのAとも、American womanのAとも受け取れることが可能なのだ。他にもantagonism(反抗)やanthem(讃歌)、antiquity(古風)など、考えられるものもある。多様な解釈を許すのは、モダニズム以降の文学作品の専売特許ではなかったのである。

3つ目は、これまた2つ目の要素につながるが、メタフィクション的な要素があることだ。虚構の中に虚構を持つ入れ子構造になっているのである。著者が勤務先の税関で、ある文書を発見し、そこからいつの間にかフィクションに入っていくのであるけれど、税関でこの文書を発見したというエピソードもフィクションなのである。この書き方を発明した功績は実に大きいと思う。

小説を読みながら、大学時代に亡くなった恩師が授業の中でこの作品への思いをたっぷりと語っていた記憶が蘇ってきた。私が若いときにこの小説を読んでいたとしたら、退屈な作品だとしか思えなかっただろう。恋愛の「れ」の字も知らない青年時代の私にとって、不倫をめぐる大人の感情に共感できるすべなどなかったはずだからだ。

学生時代にフローベールの『ボヴァリー夫人』を読んだときには、不倫をする側の気持ちにいくぶんかは共感できた。だが、不倫をした後の男女、そして寝取られた夫の苦しみは理解できなかったはずだ。こういう大人の小説は、大人になってからしか読んではいけないのかもしれない。


共通テーマ:

千野帽子『人はなぜ物語を求めるのか』 [本]


人はなぜ物語を求めるのか (ちくまプリマー新書)

人はなぜ物語を求めるのか (ちくまプリマー新書)

  • 作者: 千野 帽子
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2017/03/06
  • メディア: 新書



数日前に読み終えたのだけれど、私の印象に強く残ったものは、あまりない。この本の主旨を簡潔にまとめればこうだ。人は「物語」を好む。だが、人は自分が作った(あるいは誰かが作った)「物語」に苦しめられたり、他人を苦しめることがあるということ。この本は、それを伝える「物語」をうまく構築できていないので、千野さんの主張に説得力が感じられない。やはり「物語」は大事なのである。


中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)

中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく)

  • 作者: 國分功一郎
  • 出版社/メーカー: 医学書院
  • 発売日: 2017/03/27
  • メディア: 単行本



何年か前に、國分功一郎さんの『暇と退屈の倫理学』を読み、「ふーん」と思った。私自身が退屈そのものだったからこそ、あまりピンと来なかったのかもしれない。今回の『中動態の世界 意志と責任の考古学』はなんだか、食欲をそそるタイトルである。私もなんとなく、能動態と受動態の間にはなにか1つ別の位相が存在しているような気がしていたからだ。その感覚は日本人ならわかると思う。積極的でもなく、受動的でもない態度というものはあると考えている人は案外多いのではないか。英語はSVOが基本で、だからこそ主客が逆転する受動態が成立する。しかし、おもしろいことにインド・ヨーロッパ語族には、能動態でもなく、受動態でもない、その中間の態が存在していたという。それこそ、このウンコ臭い世界を、生きやすい無臭空間に変えてくれるものかもしれない。暇で退屈したら、ぜひとも読んでおきたい。年末あたりに読もうかな。その前に数冊読まなければならない本があるので、楽しみは、しばらくお預けである。



共通テーマ:

竜田一人『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1)-(3)』 [本]

th_IMG_20171119_205939.jpg

先日購入した第3巻をようやく読み終えました。3巻は、2014年頃の様子を描いたもので、すでに2015年に出版されていたことを寡聞にして知りませんでした。

3巻は1巻と2巻とは違って、竜田さんの危機感が欠如しているように思えます。福島第一原発の自己処理も安定期に入っているのだと感じました。

この3冊を通じての竜田さんの関心は、原発事故の責任を問うことでもないし、事故処理の利権をめぐる人々の醜さを描くことでもありません。竜田さんは、現場作業員たちの日常を淡々と描き、また彼らのおかげで、日々事故処理が着実に進んでいく様子を漫画にしていきます。このような形での現場の記録は、東日本大震災および福島第一原発の事故の衝撃を知らない若者、あるいは、記憶に残っていない若者たちにとって非常に貴重なものになると思われます。

余談ですが、私の実家は、「いちえふ」から80kmのところにあり、れっきとした被災地です。高台にあるため津波の被害はありませんでしが、地震の被害を受け、床下の一部が陥没したり、家族は1週間以上、電気も水も供給されない過酷な生活を送りました。もちろん風呂に入れませんでした。私は埼玉に住んでいるので、現場にクルマで行くことすら許されていませんでした。交通渋滞を引き起こせば、災害支援の人たちに迷惑をかける事になるし、そもそも埼玉でもガソリンが給油できなかったのです。行きたくても行くことが出来ませんでした。電話で連絡が取れたのも、災害発生から1週間近く経ってからでした。その間本当に心配して夜も眠れませんでした。放射能汚染に関しても、当時の私は知識がなかったので、過剰に心配し、また、心配するのを避けるために、あえて知識を仕入れないようにした記憶もあります。今考えると、正常な精神状態ではなかったと思います。おそらく、そのような経験をした人は多かったに違いありません。

この漫画を読んで、なぜ日本人はこのような目に遭わなければいけないのか、あらためて考え直すきっかけになってくれることを期待します。


いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1) (モーニング KC)

いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(1) (モーニング KC)

  • 作者: 竜田 一人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/04/23
  • メディア: コミック




いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(2) (モーニング KC)

いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(2) (モーニング KC)

  • 作者: 竜田 一人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/02/23
  • メディア: コミック





いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(3) (モーニング KC)

いちえふ 福島第一原子力発電所労働記(3) (モーニング KC)

  • 作者: 竜田 一人
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/10/23
  • メディア: コミック



共通テーマ:コミック

矢部宏治、『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』 [本]

先週の日曜日は、川越に行き、クルマを市役所の駐車場に停めて、街歩きを楽しみながら、「小江戸蔵里」まで行って、お土産を買い、敷地内にある「まかない処大正蔵」というレストランで久しぶりに家族揃ってランチを楽しみました。少食な妻は商店街で食べ歩きを楽しむために蕎麦を選びましたが、我々男どもは豚の角煮定食を選びました。五香粉(ウーシャンフェン)の香りがきつく、若干食べにくい感じがしました。ということで、今晩は、私が豚の角煮を作りました。いつものように味付けは甘めにし、煮玉子も付けました。

もちろん、私のプライベートな面は「知ってはいけない」ことではなく、「知らなくてもいい」ことでしょう。しかし、これから紹介する矢部宏治著『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』 (講談社現代新書)に書かれていることは、日本人として、「知ってはいけない」ことではなく、「知っておいかなければいけない」ことです。

15年以上前、小説家の田中康夫さんが長野県知事を務めていた頃、航空事情に詳しい田中さんが、浅田彰さんとの対談集『憂国放談』の中で、「東京の上空は日本の航空会社が自由に飛行できない」ということを語っていて、非常に驚いた記憶があります。日本は、戦後何十年経ってもいまだにアメリカの支配下に置かれていることに呆れ果てました。

この事実に関して、この本の著者である矢部宏治さんはもっと掘り下げています。日本は米軍にとっていまだに占領地ですから、事実上アメリカの属国です。よって、アメリカ(アメリカ軍)の主張は全面的に従わなければいけません。

保守政権を自負する自民党であっても、実際に保守しているのは、このような戦後の「対米従属」の姿勢であり、独立国における「自由」と「民主制」ではありません。自民党が、「自由」をアメリカの手から取り返そうとする度に、首相が交代させられてきました。田中角栄が中国の周恩来とアメリカの許可を得ずに、直接国交を結んだことは歴史的な事件でした。その後、田中角栄は、ロッキード事件というアメリカの陰謀めいた事件で、政権から追放されました。

直近では、民主党政権が誕生し、鳩山由紀夫首相が、日本がアメリカから独立する第一歩として、沖縄から米軍基地を追い出そうとしましたことは記憶に新しいと思います。ところが、アメリカにルーピー(キチガイ)扱いされ、あっという間に、首相の座から引きずり降ろされました。

残念ながら、ことほどさように日本は普通の国ではないのです。その証拠に、日本の上空は、ほぼ全面的に、米軍に支配されています。沖縄、岩国、横田の上空には、アメリカ軍の許可なしには、日本の飛行機は飛ぶことができません。しかも、緊急事態が発生した場合、アメリカ軍が日本全土を自分たちの軍隊が活動できるように密約が取り交わされており、戦争が勃発した場合には、米軍は日本の自衛隊を自由に使うことができるとなっているのです。

野党を支持する人たちならば、そのようなことは仄聞しているはずです。しかし、自民党を支持する人たちは、それを知らないのかもしれません。もしくは、知っていても、「現状に甘えて」、知らないふりをしているのかもしれません。そういう日本人を、われわれはとうてい愛国者とは呼べないでしょう。

自民党は憲法9条に自衛隊を明記するとしています。しかし、それをすれば、憲法違反を主張する日本人の意見をものともせず、アメリカ軍は自衛隊を思いのままに動かすことができるようになります。そのような形で、他国に主権を譲ることが、独立国の人間のすることなのでしょうか。

この本は、ベストセラーになっていますから、すでにお読みの方が多いかもしれません。しかし、もしまだ目を通しておられないならば、ウヨクもサヨクも関係なく、是非とも読んでいただきたいと思います。もはや、日本がアメリカの属国であるということは、日本人が知らないふりをしていられない硬い事実(ハードファクト)であって、陰謀論なんかではありません。


知ってはいけない 隠された日本支配の構造 (講談社現代新書)

知ってはいけない 隠された日本支配の構造 (講談社現代新書)

  • 作者: 矢部 宏治
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/08/17
  • メディア: 新書





共通テーマ:

人はなぜ物語を求めるのか [本]

人は「自分のストーリー」で苦しむ… 人生をちょっと楽にするヒント

人間は物語を求める。近頃のCMはめっきりストーリーものが多くなった。いま買うと(契約すると)、何割安くなるというようなスタイルがすっかり消えた。大学の英語の授業では(英会話に役に立たないものの筆頭として)小説を一切扱わなくなったのに比例して、人々の心に深く訴えるのはストーリーだということに人々が気づき始めているに違いない。

物語は、因果関係という側面がある。人間は、AがあったからBがあり、BがあったからCがあるという因果関係の連続として、時間を理解する習性がある。それを物語という。歴史をフランス語では、Histoireという。その同じ単語が物語の意味を持つ。歴史もまた物語だからだ。歴史も誰かの視点で書かれた物語なのである。歴史は後の権力者の都合に合わせて書かれたものであり、そうではない視点から見た歴史も必要だとして、歴史修正主義が生まれたわけだ。敗者から見た歴史、女性から見た歴史など

文学は、そんな因果関係を下にした物語をベースにしている物が多いし、多くの読者はそれを求める。しかし、因果関係をぶち壊すタイプの物語もある。それが20世紀に始まるモダニズム文学だった。それは私の専門だ。

著者の千野帽子さんのことはよく知らないが、もしかしたら、私の専門分野と大きく関わっている人のような気がする。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

人はなぜ物語を求めるのか (ちくまプリマー新書) [ 千野 帽子 ]
価格:907円(税込、送料無料) (2017/11/19時点)



明石順平、『アベノミクスによろしく』 [本]


アベノミクスによろしく (インターナショナル新書)

アベノミクスによろしく (インターナショナル新書)

  • 作者: 明石 順平
  • 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
  • 発売日: 2017/10/06
  • メディア: 新書



大学の講師室である会話が聞こえてきた。その先生は、授業で学生たちに自分たちの大学の良いところを紹介させるというプレゼンをさせたという。就職率が良いとか、学習支援が充実しているとか、なんだとか、学生たちに言わせたそうだ。自画自賛も甚だしく、気持ちが悪くなった。まるで宗教である。就職率が良いのは、少子高齢化で人手不足が深刻だからであって、学習支援が充実しているのは、中学レベルの内容も理解していない馬鹿ばかり集まってきているからなのだが、彼らはそういう側面を見ようともしない。

事実、われわれ末端の教員の待遇は、その大学がもっともひどい。目に見えて、年々悪化していく。語学の授業は、大昔に戻って、50人体制になった。来年からは1クラス60人になるそうだ。それでいて、教員に支払われる給料は同じ。働けば働くほど、貧乏になっていく。まさにデフレだ。こういう大学の現状を見るにつけ、大学教育の将来に対して大きな不安を覚える。どうせ能力がない学生に教えても意味はないし、大学経営として儲かればいいということなのだろう。そのうち1クラス1000人になって、教師はロボット1台、テストの採点もすべてコンピュータ任せになるのだろう。最終的には、教員も大学の建物すらいらなくなる時代が来るのだろう。この改悪の結果、驚いたことに、専任の先生がお辞めになり、その先生の受け持っていた授業は、後任が決まるまで、10月中まるまる授業がなかったそうだ。

自画自賛といえば、安倍総理。

昨晩、明石順平さんの書いた『アベノミクスによろしく』を半分ほどだが一気に読んだ。データから検証すると、アベノミクスの成果はほとんどなく、失敗であることは明確であるだけではなく、日本の将来に大きな影を落としているということが懇切丁寧に書いてある。多少経済学の知識がないと読みにくいところもあるが、対話形式になっているので、細かい字で書かれた注釈を読まなくて済む。

アマゾンのレビューを見ると、この本を否定する人がいる。アベノミクスの成果を本気で信じているらしい。ここまでくると「宗教」だ。信じる者は本当に救われるのだろうか。人類史において、信じる者が救われた経験はただの1度でもあっただろうか。

この本は、国が公表しているデータをもとに客観的な分析をしているので、これを単なる個人の意見だと片付けるわけにもいかない。ハードファクトかソフトファクトなのか私には断定できないが、いずれにせよ、ファクト(事実)であることは確かであろう。

アベノミクス効果で株価が上がったことは確かだが、それは銀行や証券会社が抱えるお金の運用先がなくなってしまったからにすぎない。(企業が借りてくれないということ。)企業の株価が上がっても、企業は労働者に利益を還元することもなく、内部留保が積み上がる。(エコノミストの多くは企業業績も良くなったと言うが、内部留保が増えるということは、まだまだ彼らは将来が明るいとは考えていないことの証左だ。)一方、国は国民に社会不安や将来不安を煽り、国を守るためにはアメリカから武器を買わなければならないし、社会保障のために税金を上げなければならないと言ってどんどん増税をする。

加えて、景気を良くするためと言って、国は無理に円安に誘導してしまった。円安を日本経済にとってプラスと捉える人々が多いけれども、かつて円高のときに、日本企業は海外に工場を移してしまったので、円高の影響より、円安によって値上がりした原材料を輸入せざるをえなくなったことで、利益が出なくなるという副作用のほうが大きい。彼らはどういうわけか時代が大きく変わったことを認めようとしない。

これによって、物価が上がり、労働者の実質賃金は下がる。労働者の消費意欲が消え、ますます物が売れなくなる。結果、今の日本はスタグフレーション(不景気下の物価高)に陥ったわけだ。(国もエコノミストも、今の日本がスタグフレーションに陥っていることをまったく認めようとしないのはなぜだろうか。)

アベノミクスの3本の矢のうちの最も重要なものは1本目の矢である「金融緩和」だ。日銀が民間銀行から国債を買い上げ、「マネタリーベース」(日本銀行券発行高+貨幣流通量+日銀当座預金の合計)を増やせば、「マネーストック」(世の中に出回っているお金の総量)が増えると考えたのだ。ところが、そもそも市中にはお金の借り手がいないので、「マネタリーベース」が増えても、「マネーストック」は増えることがなかった。食欲のない人の目の前に、たくさん食べ物を積み上げてやれば、食べてくれると思ったのだが、食べてくれなかったのだ。彼らは、人間の食欲には限界があるという当然の事実を見ようとしていなかったのだ。そもそも安倍政権が「国難」と定める「少子高齢化」によって、人間の数が減っているのだから、食べてくれる人もいない。その国難を長年放置してきたのは歴代の自民党政権である。いまさら、そこに手を付けようとしても、遅いのである。

「リフレ派」の思い違いは、物価を上げれば、景気が良くなると考えていることだ。愚かしい人間がよくやることだが、彼らは因果関係を逆に捉えているのだ。景気が良くなれば物価が上がるのはわかる。だが、物価が上がっても景気が良くなるとは限らない。そんなアタリマエのことさえ理解できなくなっているリフレ派の命ずるままに、安倍総理は経済政策を実行したことに、アベノミクスの失敗があったわけだ。

今その失敗を覆い隠そうとして、安倍政権は、GDPの数値を不正に操作している。これまでとは違う計算方法にして、水増し、嵩上げをしているのだ。日本は中国をまったく笑えない。実際は、民主党政権の頃よりも、GDPの成長率は悪化していることは周知の事実だ。対ドルベースのGDPは、民主党政権下では、日本のGDPはアメリカの3分の1だったが、安倍政権下では3分の1以下にまで下がっている。アメリカの人口が日本の人口の3倍だから、GDPが3倍だと一人あたりのGDPはアメリカ人と釣り合っていたが、いまやアメリカ人よりも遥かに貧しくなっているのだ。

日本の株価は上がったとは言え、実際のところ、アメリカが30年前から30倍に増やしているのだけれど、日本はようやく30年前の日経平均株価に近づいてきているという程度。どれだけ日本がだめな国か我々は理解した方がいい。

あとは、ご自身で本を読んでもらい、日本を自画自賛する日本人は、泥舟のアベノミクスを信奉し、いままさに太平洋の底に沈もうとしていることを十分に認識していただきたいと思う。さもなければ、新興宗教にすがり、インチキな宗教指導者(詐欺師)にお金をむしり取られるのと同じことだ。

「働き方改革」はなぜ期待外れになったのか | ワークスタイル | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

共通テーマ:

河合雅司、『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること』 [本]


未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)

未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)

  • 作者: 河合 雅司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/06/14
  • メディア: 新書



前半は、少子高齢化が年ごとにどう進行するのかをセンセーショナルに予想し、読者を恐怖と幻滅に陥れる。後半は、そうなることを防ぐための処方箋を提示し、希望を与えることを意図している。

この本のベースとなったのは、著者が「産経新聞」に連載していた記事。そのせいか、著者は恐怖や不安を煽るのが非常にうまい。

一方、その処方箋があまりに陳腐で使い物にならない。後半は、バカバカしくて呆れ果ててしまった。どれもこれも、新聞記者が考えそうなことだ。

著者は真顔で、第三子を産んだ家庭に1000万円を配るという政策を提案している。先日、ウェブでも同じことを主張している人を見つけたが、1億なら納得するが、1000万円の「はした金」をもらったところで、核家族では親は子供3人を育てるような財政的・体力的・精神的余裕などないはずだ。都会の3LDKの狭小住宅や「マンション」暮らしでは、そのそも5人がゆったり暮らせるスペースがない。

しかも、その舌の根が乾かぬうちに、1000万円の財源は所得税の増税でまかなえだとか、自分が受けた社会保障は、死ぬ前に国に全額返還する制度を作れとまで言っている。それでは自民党の言う「無償化」と同じではないか。結局、返さなければならなくなるなら、最初から、借りないほうが良いし、そもそも、産まない(生まれてこない)ほうが良いじゃないか。労働者階級の人間は、他にも住宅ローンやら自動車ローンも抱えて、将来不安に苦しむことになることになるのだから、日本人の人口を維持するためにわざわざ3人も子供を産んで育てるなんて、「お国のため」を第一に考えているはずの右翼の中にさえもいないはずだ。そういうのが、著者が否定する「成長モデル」というのではないか。それのどこが「戦略的に縮小するための政策」なのだろうか。

21世紀は、「国家」を信頼できない時代だ。アメリカの大統領はトランプで、ロシアの大統領はプーチン、中国共産党の総書記(プレジデント)は習近平、北朝鮮の最高指導者は金正恩、日本の首相は安倍晋三だよ。この状態で将来に希望が持てるなんて、どうかしているとは思わないだろうか。国家はもはや信用してはいけないという新「常識」を、左翼も右翼もいまだに常識と見なしていないことに呆れ果ててしまう。

その点、安倍総理は、我々凡人よりも何歩も進んでおり、どうせ日本は破綻するのがわかっているのだから、自分の代で日本国民の財産をすっからかんに使い果たし、さっさと外国にとんずらしようとしている。どうせ潰れるのだから、さっさと潰してしまえとは潔い。さすがはサムライの国の総理だ。彼こそ真のグローバリストだ。私はそういう安倍総理を大いに尊敬する。私もシンゾーのお友達になって、銀座の高級鉄板料理レストランの「銀座うかい亭」で接待してもらえなくてもいいけれど、ハンバーガーくらいおごってもらいたいものだよ。

この本の前半を読めば、明確だが、日本にはもう明るい未来はやってこないのである。それがはっきりとわかっているのに、アベノミクスのおかげで株価が上がっただの、いざなぎ景気を超えただの、騒ぎ立てている人がいる。タイタニック号のように巨大な氷山にぶつかって、いままさに沈没しつつあるのに、彼らは自分たちが馬鹿騒ぎをしていることにまだ気づいていないらしい。人間というものはそういう因果な生き物なのだろう。これこそ「文学」だ。

共通テーマ:

内田樹、姜尚中、『アジア辺境論 これが日本の生きる道』 [本]


アジア辺境論 これが日本の生きる道 (集英社新書)

アジア辺境論 これが日本の生きる道 (集英社新書)

  • 作者: 内田 樹
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2017/08/19
  • メディア: 新書



内田樹さんと姜尚中さんはともにリベラリストにカテゴライズされる思想家(Thinker)だ。二人の議論をパラパラとまとめてみると、以下のような感じになる。

・民主主義というのは、物事を簡単に決めないこと。

・「自由」が90年代に新自由主義の台頭に同調し、「機動性」と同義になってしまった。

・英米の新自由主義に対抗するためには、いま一度、戦前にその萌芽があったアジア主義を日韓台で復興するしかない。

・日本のナショナリストは、エゴイスティックなグローバリストである。彼らはナショナリストの仮面をかぶるのは、国民の貯金に手をつっこみやすくするため。

・安倍総理の唱えるトリクルダウン理論は、映画『仁義なき戦い』の山守組長(金子信雄)が子分を指して「こいつらが集めてくるこまい銭を、わしがどーんと張って儲けてやっとるんです」という理論と同じ。

・受益者負担の原則を適用しろと本気で唱える橋下徹が創立した「維新の会」は、近代市民社会の解体という事実そのもの。すべては自己責任であり、共同体は不要という考えだ。

・多様性を重視した働き方改革やら成果主義というのは、人件費カットと身分制度の固定化を目的にしたものでしかない。

・日本は、人を監視したり、人の足をひっぱたりする督戦隊部門に資源を集中させている。彼らは何も生み出さないからこそ、日本の生産性は低いままなのである。

・日本人にとっての「グローバル化」は、「ドメスティックな格付け」と助成金のためだけに行われている。

・日本は、中産階級の再構築以外に進むべき道はないのだが、現在はその手立てについての国民的議論すら始まっていない。

・諸悪の根源は、日本人の「属国マインド」にある。

全体の議論を一言でまとめると、日本は、アメリカに押し付けられている「新自由主義」に対抗するために、韓国、台湾と連携し、辺境アジア圏を構築し、その中で中産階級を再構築する道を進むべきというもの。

少子高齢化で、日本ではあらゆるもの(政治、経済、教育、文化、知性、品格など)が急激に劣化・衰退している状況下で、アジアをひとつにまとめる力があるかどうかと考えたら、二人の話はあまりに非現実的としか思えない。しかし、基本的には、国家規模を縮減するには、新自由主義的政策によるのではなく、互助会のような共同体を復活させることしかないという考えには賛同できる。戦況が悪化する中で、個人がバラバラになって戦うよりは、小規模でもチームで戦ったほうが少しでも打撃を小さくできるだろうと思うからだ。気になる方は、ぜひともご自身で本を手にとってみると良いと思う。

アマゾンのレビューでは、細部を取り上げて、彼らの議論を全否定をするようなものが見られる。そういう批判は「揚げ足取り」というのであって、学問的には完全否定される態度である。ろくでもない政治家はよくやっているけれど、マナー批判の議論である。細部=全体とは限らないし、全体=細部というわけではないことを本当は知っていて、相手を批判するような手口を、一般人に教えた政治家の罪は重い。私は自分の授業ではそういうことを教えているつもりだけれど、アマゾンのレビュアーたちは教えてもらってないのかな。というか、自分で学ぶ機会がなかったのだろうか。

レビューの中でもっともぶったまげたのは、「読んでは見たのであるが、何も得られなかった。読むに値しないと言える。」というもの。こういう人を「バカ」と言う。学生による授業評価にも、こういう批判をたまに目にするらしい(やる気を失うから、私はそんなものには絶対に目を通さないので、人から聞いた話である!)。自分の能力が低すぎて、本を読んでも何も得られないというのは個人的な能力の問題であり、その個人的な問題を「(この本は)読むに値しないと言える」と客観的事実に格上げするのは、論理の飛躍である。自分の馬鹿さ加減に気づかない人は、正真正銘の「バカ」と呼ぶに値する。


田舎で熟成がすすむ「腐る経済」 | TURNS

共通テーマ:

吉野源三郎著『君たちはどう生きるか』 [本]

東京新聞:『文学効能事典』(E・バーサドほか著)は、病や悩みに効く古…:社説・コラム(TOKYO Web)

文学は様々な悩みを癒やす薬として機能する。文学者側は、できるだけそういう部分を見ないようにし、社会的、文化的、政治的、哲学的な問題に引きつけて読もうとしてきた。しかし、文学の効用としてもっとも重要なのは、心の癒やしであることは疑いようがない。

いじめの処方箋として、『東京新聞』の社説が紹介しているのが、吉野源三郎著『君たちはどう生きるか』。「いじめ」に関するエピソードは後半に出てきて、しかも小説のクライマックスとなっているため、確かに強く印象に残る。確かに、私の心にも強く響いた。人間としての挟持を持つことの大切さ、しかし同時に、人間の弱さ、不甲斐なさをありのままに受け入れることの必要性など、この小説からさまざまな声が聞こえてくる。
しかし、この本の核心は、自分の頭でしっかり考えることの大切さを訴えているところであることを忘れてはいけない。周囲の意見や感情に流されることなく、また、権力者に忖度したり、おもねることなく、理性的に考えられる人間が増えていかなければ、この世界は決して良くならない。おそらく、吉野源三郎はこの小説を戦後民主主義の教科書として上梓したのだろう。

私も恥ずかしながら、この名著をつい数ヶ月前に読んだばかり。本日、ウェブ版の『朝日新聞』で、宮﨑駿監督は数年かけてこの作品をアニメ映画にするという記事を読んだ。実に素晴らしいことだ。宮崎アニメは個人的にはあまり好みではないのだが、この作品ならぜひとも見たい。

岩波文庫版には、日本を代表する思想家の丸山真男のあとがきが付録されている。それだけでも、手に取って読む価値がある。



君たちはどう生きるか (岩波文庫)

君たちはどう生きるか (岩波文庫)

  • 作者: 吉野 源三郎
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1982/11/16
  • メディア: 文庫




漫画 君たちはどう生きるか

漫画 君たちはどう生きるか

  • 作者: 吉野源三郎
  • 出版社/メーカー: マガジンハウス
  • 発売日: 2017/08/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



この作品は漫画化もされている。


この社説はいずれ消されることになると思うので、ここにすべて引用しておこう。

 『文学効能事典』(E・バーサドほか著)は、病や悩みに効く古今東西の小説を紹介する案内書だ▼たとえば、憎しみを感じるときの特効薬はオーウェルの『一九八四年』で、恋愛ができなくなったときに効くのは村上春樹著『1Q84』。なるほど…と思わせるが、歯痛に効くのはトルストイの『アンナ・カレーニナ』で、花粉症にはヴェルヌの『海底二万里』が効くというのだから、ユニークな処方箋だ▼ではこの病に効くのは、どういう「薬」か。政府の調査で、二〇一六年度に把握された学校でのいじめが、過去最多の三十二万件だったと分かった。いったい、いじめる子、そして、いじめを見て見ぬふりをしていた子の数はどれほどになるのか▼『文学効能事典』は「人をいじめてしまうとき」の薬として、エイジー著『家族のなかの死』を挙げているが、入手困難。かわりに処方したいのが、吉野源三郎著『君たちはどう生きるか』だ▼主人公は、いじめを見て見ぬふりをした自分、理不尽な暴力に足がすくんでしまった自分の弱さに悩み、発熱して寝込んでしまう。その枕元でお母さんが語る言葉は、まさに特効薬だ▼八十年前、「右へ倣え」の全体主義の時代に、自分の頭で考える大切さを説いたこの名作は最近、漫画(マガジンハウス)にもなり、大いに売れているという。時代が求める「読む薬」なのだろう。





共通テーマ: